SWOT分析という言葉を知っていますか?
SWOT分析は、企業の戦略的意思決定をサポートするためのツールです。
企業が環境に合わせて、今後どのような方針で戦略を決定していくのかを、「抜けもれなく」考察するためには、様々な視点から環境を分析することが求められています。
そのためのSWOT分析を学んでいきましょう。
>SWOT分析とは?
SWOT分析の定義
SWOT分析は、企業やプロジェクトの強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を評価する戦略計画ツールです。
それぞれの頭文字をとって「SWOT」(スウォット)と名付けられています。
また、SWOT分析は、市場競争やプロジェクト計画に関連する内部および外部の要因を特定し、企業の戦略的意思決定に活用されています。
SWOT分析の歴史的背景
SWOT分析の起源は1960年代にさかのぼります。
このアプローチは、スタンフォード大学のアルバート・ハンフリーによって開発されたとされています。彼の研究は、フォーチュン500企業を対象に、企業計画の失敗の原因を探り、変化を管理する新しいシステムを作り出すために行われました。この研究からSWOT分析が生まれ、組織の戦略的位置を評価するための基本的なフレームワークとして用いられるようになりました 。
>SWOT分析の目標設定
では、実際にSWOT分析に取り組むために、まず目標設定をしていきましょう。
SWOT分析における目標設定の重要性
方向性の明確化: SWOT分析を始める前に具体的な目標を設定することで、分析の方向性が明確になります。目標がないと、データ収集が無方向に広がり、効率的な分析が行えなくなる可能性があります。
関連性の確保: 分析の目標を設定することで、収集する情報の関連性が保たれ、必要なデータに焦点を当てることができます。これにより、無関係な情報に時間を費やすことなく、最も重要な洞察に集中することが可能です。
成果の最大化: 明確な目標を持つことで、SWOT分析の結果を具体的な戦略に変換しやすくなります。目標が具体的で測定可能であればあるほど、分析後のアクションプランが効果的になり、期待される成果を達成しやすくなります。
SWOT分析における目標設定のプロセス
①評価の範囲を定める: 分析するプロジェクトの範囲を明確に定義します。
これには、製品コンセプト、選定市場、地理的戦略などが含まれる場合があります。
②具体的な問題点を特定する: 分析の主な焦点となる具体的な問題点や課題を特定します。
これにより、分析のプロセス全体で一貫したテーマや問題意識を持つことができます。
③SMART基準の適用: 目標は「具体的(Specific)」、「測定可能(Measurable)」、「達成可能(Achievable)」、「関連性が高い(Relevant)」、「時間的な制約がある(Time-bound)」のSMART基準に基づいて設定することが望ましいです。
ここの目標設定や、プロジェクトの定義は地味な作業ですが(私も苦手です、、、)より効果的にプロジェクトを進めるためには、必要不可欠な作業です。
細かいところまで詰めていきましょう。
>SWOT分析の実施
ついに実践です。先ほどの目標設定の次のステップから一緒にSWOT分析に取り組んでいきましょう。本当のSTEP1は目標設定なので、ここでは本当はSTEP2からですね。
STEP1:データ収集
・S:強みとW:弱みの特定
組織の内部環境を分析する段階です。自社でのマーケティング調査や、マーケティング調査会社を利用して、情報を収集しましょう。
強みと弱みというのは、自社が他社と比べてどうなのかという視点がとても重要なので、競合他社の分析をしっかり行いましょう。
この時、3C分析というフレームワークを使用することが有効です。
・O:機会T:脅威の特定
組織の外部環境を調査し、市場の機会や潜在的な脅威を特定します。
PEST分析という手法を使って、あらゆる角度から環境の分析を行いましょう。
STEP2:分析の実施
・SWOTマトリックスの作成: 強み、弱み、機会、脅威をSWOTマトリックスに整理し、それぞれの要素がどのように関連しているかを視覚的に表示します。
縦軸に強み弱み、横軸に機会脅威を設定します。(逆でも構いませんが、この二つずつのセットは崩さないでください)
・関連性の評価: 各要素がどのように互いに影響を与えるかを評価し、仮説を立てます。
例えば、ある強みが特定の脅威を克服するのにどのように役立つか、またはある弱みがどの機会を制限するかなどです。
すごく簡単な例ですが、油を落とす技術が自社の強みなので、選択の臭いが気になる人が多いという機会があれば、この技術を活かせるのではないかと考えるというようなことです。
STEP3:戦略の策定
・戦略の検討: SWOT分析の結果を基にして、実現可能で効果的な戦略を策定します。
この時、前のステップで行った関連性の評価をもとに考えます。
パターンとしては、
強み×機会、強み×脅威、弱み×機会、弱み×脅威
の4パターンから考えます。
これをクロスSWOTと言います。
例えば、昔のアメリカで、ガムが流行っていましたが虫歯が増え、社会問題になりました。
これに対して、ガムを作っていたA社はこの脅威を、自社の強みであるキシリトール系の技術で、歯が綺麗になるガムを作成しました。
これは、強み×脅威のパターンで自社にとての脅威を強みで避けたマーケティング戦略でした。
・アクションプランの作成: 具体的なアクションアイテムとタイムラインを含む詳細な計画を作成します。誰が何をいつまでに行うかを明確にし、進捗を追跡できるようにします。
一般的な、プロジェクトプランの作成ですね。
STEP4:実行の評価
・実施: 策定したマーケティング戦略に従ってアクションプランを実行します。
・評価と調整: マーケティング戦略の効果を定期的に評価し、必要に応じて調整します。市場や内部環境の変化に応じて分析を更新し、戦略を最適化することが重要です。
このような流れで、SWOT分析を行っていきますが、いちばん重要なことは3C分析とPEST分析からより正確な、強みと弱み、機会と脅威を見つけ出すことです。
マーケティング調査会社や、二次データを活用しましょう。
>SWOT分析の事例
強み × 機会: SAMSUNG
- 強み: 先進的な技術と製品イノベーション能力。
- 機会: スマートホーム市場の拡大。
- 活用例: サムスンは自社の強力な技術開発能力を活用してスマートホームデバイスを開発し、成長しているスマートホーム市場に積極的に参入。独自のスマートデバイスと統合ソリューションを提供することで、新たな収益源を確保しています。
強み × 脅威: Tesla
- 強み: 革新的な電気自動車の開発と強力なブランドイメージ。
- 脅威: 石油価格の低下による伝統的な自動車への需要の維持。
- 活用例: テスラはその独自技術とブランドの力を生かし、持続可能な交通手段への関心を高めるための広報活動と製品開発を進め、市場での先行者利益を維持しながら、石油価格の低下による影響を最小限に抑えています。
弱み × 機会: Canon
- 弱み: デジタルカメラ市場の縮小。
- 機会: 増大する医療画像診断市場。
- 活用例: キヤノンはデジタルカメラ技術の縮小する市場に対処するため、医療診断分野への進出を加速。既存の光学・画像処理技術を活用して高品質な医療画像診断機器を開発し、新たなビジネスチャンスを創出しています。
弱み × 脅威: Nokia
- 弱み: スマートフォン市場での遅れ。
- 脅威: 高い競争圧力と技術の急速な進化。
- 活用例: ノキアはスマートフォン市場での競争からの撤退とブランド再構築を行い、ネットワークインフラと5G技術への焦点を絞ることで、競争圧力を転換しました。これにより、持続可能なビジネスモデルを構築し、市場での立ち位置を再確立しています。
Nokiaのように脅威から撤退するのも立派なマーケティング戦略ですね。
ただ撤退するのではなく、戦略の方向性を変えて違った領域で成功している点が、いちばん注目したいところです。
逃げるのではなく、別の攻撃を打ち出すこと、これは意識していきたいです。
>結論
さて、SWOT分析について基本から応用まで記述してきましたが、理解できたでしょうか?
ここで得た知識を使うことで、真にこのSWOT分析を自分のものにしたといえます。
自社のマーケティング戦略的な意思決定プロセスにSWOT分析を組み込むことで、ビジネスの成功に必要な全体的なビジョンと方向性が明確になります。
そのために、今すぐにでもSWOT分析を始め、自社のビジネス戦略を見直し、長期的な成長と成功を目指しましょう。
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